忘れられない犬がいる。
高校生の頃、生まれて初めて飼った犬で、離乳直後の時期から可愛がって育ててきた。
が、22年前の7月のとある日、彼は約2年半の短い生涯を終えた。
「この犬、この先飼いきれるんな?無理やろ?」
咬まれて泣き叫ぶ家族の姿を見て、近所の方が保健所に通報し、かけつけた職員さんに言われた言葉に、「大丈夫です!」と言えなかった。
「それでも飼いたい!」という私の思いは叶わず、いつの間にか人を咬むようになった愛犬に疲れきっていた家族は、保健所に引き取ってもらうことを選んだ。
可愛いという気持ちだけでは、飼いきれない犬もいる。
当時は「咬み癖を訓練で直す」という発想もなければ、咬むようになった理由もわからなかった。
彼の正確な命日を知らず、最期も看取れなかった。生かしてあげられなかった。
彼の逝った夏の日を、これからも毎年思い出すだろう…
(こんなに辛い経験は誰にもして欲しくないと、心から願います。)